毎日新聞からの抜粋です。
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民泊のルールを定めた「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が15日に施行され、
これまで旅館業法の許可が必要だった民泊が、都道府県などへの届け出で営業できるようになった。
しかし、手続きが煩雑で、全国に6万件あった民泊物件のうち、
届け出を行ったのは8日現在で2707件にとどまる。違法な「ヤミ民泊」をなくし、
訪日外国人旅行者の受け皿とするのが新法の目的だが、個人経営者らの出足は低調だ。
その一方、将来性をにらみ、民泊の仲介には企業の参入が相次いでいる。
「営業に必要な届け出番号の標識がやっと3日前に届いた。
既に香港から旅行者の予約が入っており、15日の営業開始に間に合ってよかった」
埼玉県鴻巣市で民泊施設「陽だまりの家」を始める自営業、岡野浩一さん(58)は
民泊新法に基づき、届け出の受け付けが始まった今年3月に埼玉県庁を訪れた。
ところが県に不明な点を質問しても「国に聞いてみないとわからない」と言われ、
地元の消防署からは「年度末で忙しい。4月末か5月上旬には対応できるので待ってほしい」
と言われた。県も消防署も民泊の事務手続きは初めてで、不慣れな様子だったという。
岡野さんは自宅の離れで民泊を始めるため、
消防署の指導に従い非常用照明器具と煙感知器を設置したが、
煙感知器は民泊特需のためかメーカーの生産が追いつかず、
標識の受け取りは新法施行日の直前となった。
消防施設の設置には30万~40万円ほどかかった。
さらに新法は外国人が宿泊する場合、パスポートをコピーするほか、
2カ月ごとに宿泊人数や日数を自治体に報告するよう求めている。
「民泊をやるにはお金もかかり、面倒な手続きもある。
だから民泊をやりたくても様子見の人が多いのではないか」と岡野さんは語る。
届け出が低調な理由はこれだけではない。新法は近隣住民への配慮から、
宿泊日数の上限を年180日としたが、騒音やごみ散乱などのトラブルに対応するため、
全国48の自治体が条例で営業区域や期間をさらに制限したことも影響する。
京都市は営業日数を原則60日とし、家主不在型の民泊では苦情などに対応するため、
管理者を10分以内に到着できる場所に駐在させるなど厳しい規制を定めた。
民泊に詳しい石原遥平弁護士は「新法は多方面への配慮からいろいろな規制を盛り込まざるをえず、
使いやすい制度とは言いがたい。しかしルールができたことは歓迎すべきで、
必要があれば改正すればよい」と話す。
「住宅宿泊事業者」の届け出件数は低調だが、
民泊の物件を紹介する「住宅宿泊仲介業者」などには企業の参入が相次ぎ、
さまざまなサービスが登場している。企業は民泊が将来的に広がるとみているためだ。
「民泊によって(宿泊手段の)選択肢が増えるのは旅行者にとってはうれしいことだ」。
スウェーデンから京都市内に観光に訪れたエンジニアのモートン・アンバーグさん(28)は、
民泊仲介サイト世界最大手の米エアビーアンドビー(Airbnb)を利用し、
民泊マンションを予約した。「宿泊先は立地と価格などいろいろな条件を見て選びたい」
と仲介サイトの使い勝手にも満足げだ。
エアビー社は新法施行前に受け付けたヤミ民泊の予約を取り消し、混乱を招いたが、ネイサン・ブレチャージク共同創業者が14日、東京都内で会見し、「法律の専門家によるセミナーを開くなど住宅宿泊事業者の届け出手続きをサポートし、法令を順守したい」と述べ、日本国内で合法的な民泊を推進する考えを明らかにした。
エアビー社は全日本空輸など日本企業36社と提携。
全日空の特設サイトでエアビーを利用すると、
宿泊代金に応じてマイルがたまるサービスを行っている。
ファミリーマートもエアビー社と提携し、一部店舗で鍵の受け渡しを15日に始める。
新規参入の動きも目立っている。
楽天は不動産情報サービスのライフルと新会社を設立。
仲介大手の米ホームアウェイ、全国古民家再生協会と提携し、
古民家を宿泊施設として貸し出すサービスを始める。
下着メーカーのワコールは、
本社のある京都市内の京町屋や古民家を改装し、民泊事業に参入した。
空き家だった住宅を借り上げて改装する。民泊は古民家だけでなく、
中古マンションやビルの改装が増えており、空き家解消の手段としても注目されている。
情報通信総合研究所は
16年の民泊の取引金額6783億円が20年代前半には1兆3121億円に倍増すると予想。
「空いている部屋があるから貸そうというシェア文化が日本に根付き、
借りる側にも不安がなくなればビジネスとして伸びるだろう」と話している。
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